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第1章:世界から見た日本の子どもの幸福感

■ 日本の子どもは、本当に「不幸」なのか?

「日本の子どもは自己肯定感が低い」――
この言葉を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

実際、国際的なデータを見てみると、日本の子どもたちの“幸福感”は、先進国の中でもかなり低い水準にあることが分かります。

たとえば、ユニセフが2020年に発表した「子どもたちの幸福度に関するレポート(Worlds of Influence: Understanding What Shapes Child Well-being in Rich Countries)」では、OECD加盟国を中心とした38か国中、日本の子どもたちの**「精神的幸福度」は37位**という結果でした。

これは、食事や医療、教育といった「物質的な豊かさ」では高評価であるにもかかわらず、“自分の人生に満足しているか”“将来に希望を持っているか”といった心理・精神面での評価が非常に低いということを意味します。


■ 「幸福感」はどのように測られているのか?

幸福感は「笑っているかどうか」だけでは測れません。

OECDやユニセフ、WHOなどの調査では、以下のような項目を通じて、子どもたちの主観的幸福度(Subjective Well-being)が測定されています。

  • 「自分に満足している」と感じるか
  • 「毎日が楽しい」と思っているか
  • 「将来に希望を持っているか」
  • 「友達がいる」「信頼できる大人がいる」と感じているか
  • 「ありのままの自分に価値がある」と思っているか

日本の子どもたちは、これらの質問に対して「はい」と答える割合が他国と比べて著しく低いのが特徴です。


■ 国際比較:日本 vs 世界の幸福な子どもたち

では、他国の子どもたちは、どのように感じ、育っているのでしょうか?
いくつかの国と日本の違いを見てみましょう。


🇫🇮 フィンランド:「自己決定」と「個人の尊重」

フィンランドは、教育水準も幸福度も世界トップクラス。
子どもたちの幸福感が高い背景には、以下のような特徴があります。

  • 子どもが自分で選べる時間が多い(教科選択や休憩も自由)
  • テスト中心ではなく「体験」と「対話」が重視される
  • 「他人と比較されること」が少ない
  • 成績で人を評価しない教育文化

結果として、自己肯定感・将来への前向きさが非常に高いのです。


🇳🇱 オランダ:「学力より家庭と人生のバランス」

オランダでは、OECD調査で「子どもが最も幸福な国」の一つに選ばれています。

その理由の一つが、「勉強第一」ではなく「子どもの人生全体を重視する教育方針」です。

  • 学校の宿題は最小限
  • 塾や受験のプレッシャーが少ない
  • 家庭での会話や自由時間が多い
  • 親が“感情的な支え手”として機能している

結果として、オランダの子どもたちは、勉強への意欲も高く、自主性も育ちやすい傾向があります。


🇰🇷 韓国:「過剰な競争社会の弊害」

一方、日本と似たような状況にあるのが韓国です。

韓国もまた、学歴社会・受験競争が激しい国であり、
ユニセフの調査では、精神的幸福度で日本に次いで下位にランクインしています。

  • 塾通いが常態化(夜10時以降も学習)
  • 大学入試の難易度が非常に高い
  • 「ソウル大に行かなければ人生が終わる」とすら言われることも

こうした背景から、韓国の若者の自殺率はOECD諸国でも最上位という深刻な状況です。


🇺🇸 アメリカ:「自己表現の自由と達成感」

アメリカでは、学力差は大きいものの、自己表現の自由や達成感が幸福感に直結している傾向があります。

  • 自己主張・ディスカッションが重視される
  • 「君は何をしたい?」という問いが日常的
  • スポーツ・芸術・ボランティアなど多様な価値が評価される

特に高校生になると、自分の得意分野や進路に向けて自発的に動く文化があり、
「将来の自分を描ける感覚」が幸福感と直結していると考えられています。


■ なぜ、日本の子どもは「自己肯定感」が低いのか?

では、日本ではなぜここまで子どもたちの幸福感が低いのでしょうか?
主な理由として、以下のような要因が指摘されています。

  1. 学力中心主義と偏差値競争
     テストの点数、模試の順位が「すべて」とされやすい
  2. 親・学校・社会からの期待プレッシャー
     「もっとできるはず」「上を目指せ」が日常的なメッセージ
  3. 比較文化と序列意識
     「○○さんより成績が悪い」「××高校に行けなかった」は自己否定につながる
  4. 失敗を許さない風潮
     失敗=恥という文化が根強く、挑戦が難しい
  5. 多様な価値観の不足
     「勉強ができる=正義」「いい大学に入る=成功」という一元的な物差し

■ 何を変えるべきか?

この章の結論としては、日本の子どもたちの幸福感を高めるためには、
「点数や偏差値でしか測れない価値観」からの脱却が必要だということです。

  • 「人と比べない」「自分自身を大切にする」教育
  • 「挑戦してもいい」「失敗してもいい」と言える環境
  • 「何を学ぶか」ではなく「なぜ学ぶか」に向き合う対話
  • 勉強以外にも認められる場があること(部活・ボランティア・創作活動など)

これらの価値観を子どもと共有できるかどうかが、
学校・家庭・地域にとって大きな分かれ道になるのです。


次回は【第2章:年齢別に見た幸福感の変化】をお届けします。
小学生・中学生・高校生と年齢が上がるにつれて幸福感がどう変わっていくのか。どこで何が“重荷”になるのか――。データと具体的事例をもとに掘り下げていきます。