第2章:年齢別に見た幸福感の変化――小学生・中学生・高校生で何が変わるのか?
■ 幸福感は年齢とともに減少する?
ユニセフや文部科学省の調査を見ても明らかなのは、年齢が上がるにつれて子どもの幸福感は徐々に下がっていくという事実です。
小学生は、「毎日が楽しい」「好きな友達がいる」「授業も遊びも好き」など肯定的な回答が多く見られる一方で、中学生になるとそれが急速に減少し、高校生では「将来が不安」「自信がない」といった回答が増えていきます。
これは単なる成長の過程ではなく、学校教育の構造的な問題や、日本社会の競争的価値観が背景にあると言えるでしょう。
この章では、小学生・中学生・高校生それぞれがどのような環境に置かれ、何に悩み、どこで幸福感を失っていくのかを分析していきます。
■ 小学生――遊びと学びが一体化する「人生の最盛期」
小学校時代は、いわゆる“学歴競争”からも離れ、「楽しいこと」「好きなこと」が素直に追求できる時期です。
- 朝から笑顔で登校し、給食や休み時間を楽しみにしている
- 先生との距離も近く、親身に話を聞いてもらえる
- 「学ぶ=楽しい」「できるようになる=自信がつく」という実感がある
- 「間違えてもOK」「頑張る姿勢が評価される」雰囲気
このような環境では、自己肯定感が自然と育ちやすいのです。
また、小学校では「できないことがあっても友達が助けてくれる」「テストで悪くても先生が励ましてくれる」といった、支え合いの文化が存在します。
しかし、この黄金期は長くは続きません。
■ 中学生――思春期×評価社会=急激な変化
中学生になると、以下のような変化が一気に押し寄せます。
- 思春期による身体的・心理的な変化
- 自分と他人の違いを意識しはじめる
- 親や先生の言葉を「うるさい」と感じる
- 他者からどう見られているかが気になる
- 学力による序列が明確化
- 定期テストで“順位”が発表される
- 高校受験の偏差値が可視化される
- 内申点という数字で自分の価値が測られる
- 友人関係の複雑化
- 「グループ行動」や「SNSトラブル」によるストレス
- 無理して空気を読んでしまう傾向
- いじめや排除の不安も
これらの要因によって、**「自己評価が下がる」=「幸福感が低下する」**という流れが生まれます。
ある国立教育政策研究所の調査では、「自分に満足している」と答えた中学生はわずか27%で、小学生時代の約半数にまで減少しています。
■ 高校生――進路と将来の不安がのしかかる
高校生になると、「自分が社会に出ていく」現実が急速に迫ってきます。
- 大学受験 or 就職という選択
- 模試・定期テストの成績で進路が左右される
- “推薦を取れるかどうか”に日々が振り回される
- 保護者・教師のプレッシャーと“自己責任論”
これまで漠然としていた「将来」が一気にリアルになるのです。
また、以下のような構造的ストレスも生まれます。
- 進学校では“上には上がいる”ことに気づき、自己否定感に
- 部活と勉強の両立に悩む
- 情報の多さ(SNS、進学サイト、YouTubeなど)に圧倒される
このようにして、高校生は「がんばっても不安」「成績が上がらないと人生が終わる」といった、極端な二項対立に追い込まれやすいのです。
■ 「中高一貫校」と「公立中→高校進学」の違いとは?
最近は、中学受験をして中高一貫校に進む家庭も増えてきました。
このルートを選んだ生徒には、
- 内部進学で大学受験が少し有利になる
- 教育の質が高い(特に探究・英語・ICTなど)
- 同じ学力帯の仲間と安心して過ごせる
といったメリットがあります。
一方で、
- 周囲のレベルが高く「優越感」から「劣等感」へ
- 高2以降に一気に“受験モード”になり追い詰められる
- 大学附属校では「進路の自由がない」不満も
というように、中学受験で一足先に「幸福感の低下」に直面する生徒も存在します。
■ 幸福感の回復には「小さな成功体験」が鍵
年齢とともに低下していく幸福感を“回復”するためには、いくつかの工夫が有効です。
✅ 1. 小さな成功体験の積み重ね
「今日の課題をクリアできた」「昨日よりも勉強時間が長くなった」「友達に説明したら理解してくれた」など、“できた”という実感が子どもを前向きにします。
これは「自己効力感(Self-Efficacy)」と呼ばれるもので、幸福感に直結する心理学的指標の一つです。
✅ 2. 比較対象を“他人”ではなく“過去の自分”に
「◯◯さんより悪かった」「自分だけクラスでビリだった」ではなく、
「1か月前の自分より成績が上がった」「以前より集中できた」という自己成長に目を向ける習慣が大切です。
✅ 3. 家庭や学校が“安全基地”であること
失敗しても、落ち込んでも、怒られても、「帰ってきたら安心できる」場所があることが、子どもにとって最大の幸福につながります。
これは心理学者ボウルビィの「愛着理論(Attachment Theory)」でも明らかになっており、「安全基地」を持つ子どもは、将来のストレス耐性も高いとされています。
■ 幸福感の低下は、努力不足ではない
最後に強調したいのは、幸福感の低下は**“本人の努力不足”ではない**ということです。
社会全体が「勝ち組・負け組」や「学歴エリート」ばかりを追い求める中で、
子どもたちはその価値観に巻き込まれ、結果的に「自分には価値がない」と感じてしまうのです。
重要なのは、どの年齢でも「幸せに生きる力」を育てていく環境です。
たとえ今、中学生や高校生が「苦しい」「しんどい」と感じていたとしても、
それを「乗り越える方法」「誰かと共有する手段」「安心できる拠り所」があれば、
幸福感は再び取り戻せます。
次回は【第3章:受験ってそんなに大事?】をお届けします。
「なぜ受験がここまで重視されるのか?」「落ちたら終わり、は本当か?」という問いを、教育制度・心理的影響・将来へのつながりから読み解いていきます。
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